健康

脂肪酸について

 

テレビCMや健康番組でもよく取り上げられるEPA・DHAを初め、亜麻仁油やココナッツオイル、MCTオイルなど、様々なオイルが出回るようになりました。
動物病院でもEPA・DHAのサプリメントを処方してもらっているという飼い主様も少なくないと思います。

ところで、脂肪酸には沢山の種類があるのをご存知でしたか?
脂肪酸の種類、また、それらには夫々どのような効果があるのか、どのような違いがあるのかを整理してみましょう。

脂肪酸とは

私たち人間だけでなく、犬猫さんを初め、動物たちは、3大栄養素の1つとして脂肪を摂取しなければなりません。
この脂肪の構成要素が『脂肪酸』と言われるものです。

脂肪酸は、体内に入ると脂肪組織の中にエネルギー源として蓄えられたり、生体の細胞膜、脳、各種ホルモンを構成する材料になるなど、とても大切な働きを担っています。
この脂肪酸は、幾つかの種類に分けられます。

 

脂肪酸の種類

脂肪酸は ①飽和脂肪酸 と ②不飽和脂肪酸 の大きく2種類にわかれ、そこからさらに細かく分類されます。

 

①飽和脂肪酸
主にエネルギー源となる脂肪酸で、肉類や乳製品の脂肪(ラードや牛脂など)に多く含まれており、常温では個体として存在します。
不足すると血管がもろくなり、脳出血などの原因となりますが、過剰摂取は中性脂肪やコレステロールを増加させるため、動脈硬化の原因となります。
飽和脂肪酸は、炭素の結合数によって以下の3種類に分類されます。

 

 

<長鎖脂肪酸>
動物性脂肪酸のなかで一番多く含まれているのが長鎖脂肪酸。
一般的な食用油の大半も、この長鎖脂肪酸です。
腫瘍の原因になることもありますので、摂取量には注意が必要です。
主に、ヤシ油、パーム油、バターや牛脂などに含まれます。

 

 

<中鎖脂肪酸>
消化吸収に優れた脂肪酸のため、体内に蓄積しないのが特徴です。
通常、脂肪の消化吸収には消化酵素や胆汁酸の力が必要ですが、中鎖脂肪酸はこれらがなくても吸収されるため、体に負担がかかりにくい脂肪酸とも言えます。
また、抗酸化力が強いため、体内のアンチエイジングにも役立つことが期待できます。
ここ最近流行っているココナッツオイルやMCTオイルも、中鎖脂肪酸です。

 

 

<短鎖脂肪酸>
脂肪として直接摂取するより、腸内に届いた食物繊維を善玉菌が利用することによって賛成される脂肪酸です。
腸内環境を活性化するのに役に立ちます。
主に、バター・チーズ・牛乳などの乳製品に含まれます。

 

 


②不飽和脂肪酸
血中の中性脂肪やコレステロールの量を調節する働きがあります。
魚類や植物油に多く含まれていて、常温では液体として存在します。
不飽和脂肪酸は、炭素の二重結合の数によって、以下の2種類に分類されます。

 

<一価不飽和脂肪酸>
n-9系多価脂肪酸とも言われる脂肪酸で、オレイン酸が代表的です。
動脈硬化の原因である悪玉コレステロールを減らす効果や、肝臓や腸の働きを高める作用も期待できます。
多価脂肪酸より酸化されにくい性質を持ちます。
オリーブオイルやアーモンドに含まれます。
熱を加えると酸化しやすくなるため、加熱はしない方が良いです。

 

 

<多価不飽和脂肪酸>
多価不飽和脂肪酸には、オメガ3(n-3)系とオメガ6(n-6)系の2種類があります。

 

(1)オメガ3(n-3)系多価不飽和脂肪酸
オメガ3系の代表格はαリノレン酸とEPA/DHAです。

 

・αリノレン酸⇒えごま油や亜麻仁油などの植物性の油
・EPA/DHA⇒魚

 

αリノレン酸が体内に入り、酵素の働きによってEPA/DHAに変換されます。⇒EPA・DHAについての記事はこちら:『EPAとDHA
細胞膜を構成する成分でもあり、プロスタグランジンなどの生理活性物質の材料としても使われます。
中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やす作用や抗炎症作用、血栓予防作用があるため、生活習慣病予防などが期待できます。
自律神経系にも作用することから、ストレスの緩和作用が期待できたり、脳神経系の活性化にも役に立ちます。
不足すると、皮膚炎や集中力低下、発育不良などが起こります。
酸化しやすいため、加熱はNG!!

 

 

(2)オメガ6(n-6)系多価不飽和脂肪酸
オメガ6系には、リノール酸、γ(ガンマ)リノレン酸、アラキドン酸が含まれます。

 

・リノール酸⇒紅花油やごま油
・γリノレン酸⇒母乳や月見草油
・アラキドン酸⇒レバーや卵白などの動物性食品

リノール酸が変換されてγリノレン酸、γリノレン酸が変換されてアラキドン酸が生成されます。

オメガ3系と同様、細胞膜を構成する成分でもあり、生理活性物質の材料としても使用されます。
悪玉コレステロールを減らす作用がある一方、善玉コレステロールも減らしてしまいます。
過剰摂取では、動脈硬化を起こしたり、アレルギー症状を引き起こしてしまいます。
熱を加えると酸化しやすくなるため、加熱はしないほうが良いです。

 

【オメガ3系とオメガ6系のバランス】
多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系とオメガ6系のバランスが大事と言われています。
理想の摂取比率は

 

オメガ3:オメガ6=1:4

 

とされています。

しかし、現代はオメガ6系の油を使用していることが多く、オメガ3:オメガ6=1:10~40という比率になっているのだとか。
ペットフードも加熱処理されているものが殆どですので、恐らくこのバランスは崩れていると考えられます。

 

オメガ6系の過剰摂取によって、アレルギーや炎症が起こってしまいますし、腫瘍は慢性炎症の一つでもありますので、後々腫瘍を患ってしまう可能性もゼロではありません。

まずは、オメガ6系の油を控えてみる、オメガ3系の油を積極的に摂取して、バランスが1:4に近づくようにしてみてください。
ペットフードをご利用いただいている場合には、フードに含まれている油の比率を変えることは出来ませんので、オメガ3系を多く含む食材やサプリメントなどをご利用いただくことをお勧めいたします。

しかし、摂りすぎもよくありません。

オメガ3系は過剰に摂取することで、軟便や出血傾向が見られます。
お食事で摂取する場合、オメガ3系が過剰になることは殆どないですが、サプリメントで摂取する際(特に出血がみられている子の場合)は規定量をしっかり守って与えてあげてください。

 

また、ワンちゃん・ネコちゃんの中には、αリノレン酸からEPA・DHAに変換する際の酵素がうまく働かない子がいらっしゃいます。
この変換酵素の働きを調べることは難しいため、オメガ3系脂肪酸を取り入れる際は、、αリノレン酸ではなく、EPA・DHAの形で摂取出来るものをお使いいただくことをお勧めいたします。

監修獣医師:林美彩  所属クリニック:chicoどうぶつ診療所

代替療法と西洋医学、両方の動物病院での勤務経験と多数のコルディの臨床経験をもつ。 モノリス在籍時には、一般的な動物医療(西洋医学)だけでは対応が困難な症例に対して多くの相談を受け、免疫の大切さを痛烈に実感する。
ペットたちの健康維持・改善のためには薬に頼った対処療法だけではなく、「普段の生活環境や食事を見直し、自宅でさまざまなケアを取り入れることで免疫力を維持し、病気にならない体づくりを目指していくことが大切である」という考えを提唱し普及活動に従事している。

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